ゆきんこ
「…まさか、そんなシケた面して卒業…なんてことはやめろよ?」
「……あはは、ナイナイ。」
「……お前だって。……時間ねーんだから。」
「………!」
「……新野の進路先……、お前知ってる?」
「……ううん。」
「なら、聞いてみろよ、本人に。」
「………。」
「…あいつはもうすぐ……、ここから、いなくなるんだから。」
「………!」
「……卒業したらすぐに…。」
「そう……なの?」
「ああ。部活の推薦…だからな。早めに行って、バスケ部の練習に参加するらしいぞ。」
「……そうなんだ。」
「……想像もしてなかったのか。呑気な奴だなあ……。あと……数えるくらいしか日にちがないことに…早く気づけよ。」
あと………
何日……?
新野がいなくなる。
わかっていたことなのに……。
いざ、現実が目の前にくると。
逃げ出したくなる。
「……元気だせ。でもって、笑って過ごせよ?」
文人の優しさが……
胸に滲みる。
私を想ってくれていることが伝わって、
力を与えてくれる。
私は、新野に……
そんな優しさを、分ける余裕すら……なかった。
少しでも、私の存在が……
彼に認識して貰えるように、
いて良かったって思えるように……、
彼の記憶に……残したい。
「……うん、そうだね。ありがとね…、文人。」
「……ん。」
文人が私にとってそうであるように……
私も。