ゆきんこ
「でも、やっぱり好きだし、滉と同じ大学でも……、私のしたいことはできる。だから…、こっそり受けちゃった。今は距離を置いて、大学に受かったら……、もう一度、告白しようかなって。」





「……そう……なんだ。」




それなら……、



別れる理由はない。



ましてや、振られたのは新野の方で……。




ヨリを……戻してしまう……?





敵うわけが……ない。




「なんで……そんなことを私に…?」




「………。怖いなって思うから。」



「………?」




「…発表を待っていたら、もう遅い気がして。」



「…………。」



「もう一度……、会いたいの。なのに携帯変えちゃうし、連絡とりようもないから……。」




「……なら、バスに乗ればいいんじゃない?」



「そうなんだけどさ、できれば知っている人のいない所で…、二人きりで話したい。」




「…………。」




「……福嶋さんなら…、滉の携番、知っているんじゃない?」




「……………。」




知らない、と……



そう言えば良かったかもしれない。



でも。



進路まで変えて、人生にバクチを打ってまで。


気持ちをぶつけたいという彼女のその勇気に……、



私は、敵わないと思った。





あのバスで。


羨ましいと思っていたカップル。





誰よりも……、



新野が望んでいるかもしれない。
……そう思うと…、




嘘なんて、つけなかった。





「……勝手に聞いたら、あいつ怒るだろうな。」



「…………!」




新野の性格を…、楢崎はちゃんと知っている。





「福嶋さんを責めないように、ちゃんと言っておくから。」




「………うん。」




「ありがとうっ!」




大きな瞳をキラキラさせて……、




澄んだ瞳で見つめる楢崎。





「……じゃあ……」




私は携帯を取り出すと……、




新野の名前を探す。




「でも、福嶋さんは…、それでいいの?」




「……え?」



「嫌だったら、それはそれで何とかできるから。自宅に押しかけるなり……。」





そういえば……、



新野のお母さんが、楢崎の名前……言ってたっけ。



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