ゆきんこ
ただ静かに時は流れ……
気づけば、もう2月の末……。
ほとんどの生徒が、進路が決まっていく中で。
楢崎景の、A大学への合格の話が……
噂で流れてきた。
「……そっか…、楢崎……ちゃんと受かったんだ。」
凄いことだと……思う。
有名大学への進学は。
ここらの生徒には珍しい。
しかも、一般入試で受かっているのだから……
なおのこと。
「……凄いよねぇ、楢崎。」
私と同時に噂を聞きつけた咲は……
ぼんやり、放心状態。
「……つまりはさあ。これからも、新野と一緒にいれるってことだもんね。」
「………そうだね。」
咲の口から、新野の名前が出るのは久しぶりで……、
少しだけ、驚いた。
「……頭がいいって、狡いなあ……。」
「…咲。実力だもん。うちらがどうこう言えないよ。それにホラ…、私らだって、部活で成績残したからこそ…、推薦決まったんじゃん?」
「………。そうだけど……、東京と地元じゃあ偉い違うよぉ~!見込み……、ないのかな。」
「…………。さあ……。」
そう……、
咲がそうぼやきたくなるのも。
もう、一週間ほどで……
卒業を、迎えるから。
「そういえば…、幸。アンタは新野と連絡とってないの?」
「……とってないよ。」
「バスにも乗って来ないし。」
「…………。」
「アンタはそれで……いいわけ?」
「……いいも何も…、もう会いようもないしね?」
「……そんなの、アンタが怠惰してるだけじゃん。」
「違うよ。……とにかく、いいの、もう。」
「……あっそう。この前…、新野に聞かれたよ。『福嶋はどうしてる?』って。」
「……え?」
「一応ね、気にはしてるみたい。アンタがぱったり乗らなくなったから。」
「………そう。」
本当は。
一度だけ……
メールが届いた。
それは至ってシンプルで、
まるで社交辞令で……。
その時、新野がくれたメールは、
『元気?』
………の、たった3文字。