ゆきんこ




そう来たら、返す言葉も決まってくる。





『元気。』




淡白な……返事。




なのに今更なぜ……




気になんて、するの……?








「幸がもういいなら……、私、告白しちゃうよ?」




「…………!」





「…知ってる?南校の卒業式って、うちの学校と同じ日なの。」




「……そう……なんだ。」




「私はその日が…、最後のチャンスだと思ってる。」



「…………。」




「振られても、もう会うことはないし、吹っ切れるでしょ?一世一代の大博打。」




「……そっか。すごいな、咲は。」



「……は?」




「ちゃんと自分が思ったように…行動するから。」



「…………。」




「楢崎がね、新野と同じ大学受けたって……わざわざ言ってきてさ……。」




「……は?何ソレ、初耳……。」




「ごめん、今だから言うけどさ…、新野に告白するって…宣戦布告された。」




「………はあ?!マジで?……てことは……、もしかして、もう……?」



「……多分。」




「確かに…、一回だけ、楢崎がバスに乗ってきたけど……。新野はうちらと一緒にいた。……なら、その後に……?」




「……そうかもね。」




「でも、一回きり。それ以来…、私の知る限りでは……楢崎は乗ってない。」




「…………。」




「……新野…、何て返事したのかな?」




「……さあ……。」





「でも……、もう過ぎたことはどうしようもないね。ヨリを戻したのなら、振られるだろうし、言ってみなくちゃわかんない!気持ち伝えることが……大事でしょ!」




「……咲……。」




「いつまでもそーやって、うじうじしてなさいよ。……高校生活に、一生悔いが残るんだから。」




「………そう……かもしれないな。」




「……一人だけ大人ぶって……、カッコ悪っ。」





咲はそう吐き捨てて……





鞄を持って、さっさと帰ってしまった。








残された私は……



いつものように、机に勉強道具を広げる。





「……お前はバカだよなあ……。」




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