ゆきんこ
道中は長くて、私達は今更ながら……
お互いのことを話す。
「新野ってA大学に行くんだって?」
「……うん、よく知ってんね。」
「……楢崎さんも…同じだって聞いたから。」
「……ああ…、なる程。なあ、福嶋は?」
「私は地元。Y大学の教育学部。」
「……マジ?先生になるの?」
「教員免許はとるけど…、問題は採用よね。」
「……。う~ん、確かに。」
「新野は?何になるの?」
「おれ?建築家っ。」
「………ええっ。」
「………そんなに驚く?」
「いや…、バスケで生きるものかと…。」
「あ~……、ガキん頃は憧れてたけどね?現実、一握りの人間しか成功しないだろうな。」
「……スポーツの世界は厳しいね。」
「おう。まあ、でもさ、家の親父造園会社経営してて…、いつか俺がデザインした家の庭を親父に造ってもらえたらなあって、ずっと思ってた。」
「……社…、社長さん?」
「うん。」
「そっか……、立派な庭だったもんなあ……。」
「親父が聞いたら泣いて喜ぶよ。」
そんなたわいのないやりとりをしながら……、
お互い、肝心なことが言えない。