ゆきんこ
高校3年。
冬ー………。
部活を引退した私たちは、暇をもて余す。
推薦で大学が決まった咲と私は……
すっかり中弛み。
西校…
の、ある教室では…
「幸~、購買行こう。」
「早弁用?」
「人聞き悪いな。間食用のパン買いに。」
「……私も買おうっと。」
「太るよ。」
「ちゃんと体重戻すからいーもん。」
ぶくぶくコースまっしぐらの私達は……
甘い誘惑にまんまとのせられて、今日も購買に向かう。
「チョコチップクリームまだあるかなあ。」
「最近競争率はげしいもんね。咲この前買い損ねたっけ。」
「…そーなのよ!」
「協力しよっか?」
「頼んだ!!」
まだ1限目の後だっていうのに……
購買の前は人だかり。
豊富なパンの種類があるから……
それらは全て、早いもん勝ち。
えいっと人垣に飛び込んで……
咲と二人で吟味する。
「……あった!」
残り一個のチョコチップ!
私が手を伸ばすその前に……
背後から、スラリとした手が伸びて……
「おばちゃん、コレちょうだい。」
「………!」
ちー……ん
完売!!
ほくほく顔でそれを手にしたのは……
足までスラリ、
サラリと髪をかきあげる可憐な女………
楢崎 景。
一方の咲は、うらめしそうに……
楢崎を……
いや、
チョコチップパンを…見つめていた。
「…あ。野間さんもコレ狙ってた?」
さすがの楢崎も、ただならぬ殺気を感知する。
ちなみに「野間」は咲の名字である。
「…いや。気にしないで。」
「私違うの食べるからいーよ。」
楢崎はパンを咲に手渡して…
「120円になります。」
と、にこりと笑った。
「……ありがと……。」
ちょっぴり複雑そうな咲の顔。
お気持ち…
お察しいたします。
「…なんだろうね、楢崎景。あんだけ綺麗で…しかも人間できてる。」
確かに。
キレーだよな、楢崎景。
戦利品(?)を抱えて歩く廊下で…
咲はちょっとだけ、悔しそうだった。