ゆきんこ
「探してたんだよな?」
「……うん。」
「あの時、俺の顔見て逃げただろ?正直、気を遣ったんだろうなって。俺、あの時……、泣きそうなだったから。」
「…………!」
「……足元見たら、俺…踏んでて…。ちゃんと返して謝ろうって、チャンスを伺ってた。」
「………そんなの…、大したものじゃないのに。」
「俺はあの時、自分が失恋して…、だから、アンタがコレをもし彼氏に貰ったものだったら…なんて考えててさ。」
「……いや…、いなかったし。」
「…そういう風に見えてしまったって話だよ。…で、そんなことを悶々と考えてたら……。」
「…………。」
「……アンタがずっコケた。」
「………!」
「……結局…、チャンスはあったのに返せなくて。また何かのきっかけになるかも……なんて、狡いこと考えてた。」
「……新野……?」
「……って言っても、アンタといると雪のトラブルにばっか見舞われるから……、ついつい忘れてしまったのもある。」
「……アハハ……、ごめん。」
「…出会った日から……、アンタのその頭、白のぼんぼんをつい探してしまう自分がいて……。」
「…………。」
「…ピアスなんてどーでもよくなって、アンタ自身に……惹かれた。」
「………え……?」
それって……。
「『ゆきんこ』ってさ、アレは俺が名づけ親なんだよね。」
「………?」
「陸とアンタの話になった時に、雪のトラブルばっか起こるから、『あいつは雪の子供だ』って教えたら…陸が『雪女』って呼ぶからさ。なんつーの?名前もユキで、ふわふわしてて、もうちょっとかわいらしいイメージだからって。勝手に…あだ名付けた。」
「…………。」
ふわふわしてて……
かわいらしい?!
「…あれが精一杯の愛情表現のつもり。なのに陸の奴があまりに連呼するから……、俺が呼び損ねた。」
「…………。」