ゆきんこ
「……まあ…、もう遅いってな。」




新野は私の手の平に。



ピアスを……ころんと落とす。






「……もう、きっと会えないだろうから…、これだけは返さなきゃって思って。」



「………。」




「…これで繋がりはゼロになっちゃうけどな。」





新野……?





「……俺さ、高校の卒業式終わったらすぐに…東京に行くんだ。」




「………!」




「…だから、返せて良かった。」





「………新野…。」




「……文人と…うまくいったんだろ?」




「………うん。」




「良かったな。」




「………。新野、私……」






「…これで心置きなく、行ける。……会えて良かった。」





新野が……、寂しそうに笑う。




君は私の気持ちなんて、きっと一切知らなくて……




今ここで。



本当のことを言ったらどうなるのだろうと…思った。








「アンタを好きになって…、良かった。」








なのに………



嬉しいはずなのに、言葉が出ない。





「文人と仲良くやれよ?あと……、雪トラブルはほどほどに。」





何も言えないのは……、




君が、別れを決めているから。




君の人生のその先で、私と交わる道はないと……





そう……


思っているから。






「…私も…、新野に会えて良かった。知り合って間もないけど、新野といるとワクワクして……楽しかった。」



「……うん。」




「…バスケ……、頑張って。」



「…うん。そっちも……。」





< 131 / 234 >

この作品をシェア

pagetop