ゆきんこ
学校に着くと……
待ってましたと言わんばかりに、文人が駆け寄ってきた。
「……ネクタイしてるの、新鮮だね。」
「……ん。息苦しい。つか、幸がボタンきっちり留めてるのは眺めワリーな。」
「……変態…。」
二人でしばらく談笑していると……、
「…最終日までイチャイチャこくなぁ。こっちは緊張でガチガチだっつーのに!」
咲のイライラにとばっちりを受ける。
「………!咲。やだなあ、何をそんなに……。」
「………。幸……、私言ったよね?卒業式の日に…新野に告るって。」
「…………!」
『新野』……。
その名前を聞くだけで、さわさわと胸がざわつく。
それに…。咲……、本気だったんだ。
「…だからね、卒業式で泣いてる場合じゃないってこと。」
そっか……。
だから、緊張なんて………。
「……幸は……?」
「……え?」
「アンタは、それでいいワケ?」
「…ちょっと待ってよ。咲、私が今付き合ってるのは……。」
「……咲。頼むから…、煽るなよ。もう、幸は…俺のもんだ。」
「………。そうだったね。よかったじゃん、文人。」
「……おう。」
「…なら…、なんだ。結局勝負すら……させてもらえないってこと…?」
「…………?」
「…アンタらしーね、幸。」
咲の瞳が。
同じ人を見つめていたその瞳が……
私に訴えかける。
「咲……?」
「おっと、今のうちにトイレに行っておこっと。」
咲はさっさとその場を去ったが……
なんとなく、私と文人は後味が悪い。
「………ハハ、何言ってるんだろうね、咲。」
「…………。」
「…文人……?」
「!…ああ…、うん。そうだよな。まあアイツが変なのは今に始まったことじゃない。……気にすんな。」
「……うん。」