ゆきんこ
「幸~、俺にもパンちょうだい。」
私たちを待っていましたとばかりに、教室で出迎えたのは……
川澄 文人。
学校で一番仲のいい、男子生徒だった。
「…高くつくよ。」
「うっそ。幸は優しいからそんなことしないっしょ。」
「…………。」
何とも…憎めない奴である。
私が焼きそばパンを半分こしていると……
「お。咲、今日は買えたんだ?」
早速くいつく文人。
「いーや、楢崎景にゆずってもらった。」
「ああ、楢崎?あいつホント男気あるよなあ…。」
奇しくも、この男も…
元・バスケ部。
「あいつのオトコも、マジかっこいい奴だけどな。」
「…………。」
「へえ、誰、誰?」
今度は咲が食いつく。
「ウチの高校?」
「いーや。南校。」
「みなみ……。へぇー、男子校じゃん!……あ。そういえば…南校の人で、同じバスの人!めちゃくちゃカッコイイの一人いるよね、幸っ。」
「……へっ?!」
おっと……
いきなりピンポイントできた?
「えっと…、そう、確か……」
「「新野?」くん!」
二人の声が…揃った。
「へぇー、あいつまだバス通してんだ?南校のバスケ部で、一応顔見知り。」
「そうなの?いやあ、実は聞き耳立ててんだけどさあ~、周りがうるさくてあんま聞き取れないんだよね。」
「…………。」
咲……、
咲もそうだったんだ。
「…背も高いしさ、ありゃあ間違いなく女はいるだろうって思ってた。そっか、バスケかあ~。幸もどの人かわかるでしょ?」
「………。う、うん、まあ…。」
「彼女が楢崎かあ…。う~ん、狙ってたんだけど…勝ち目ないな。」
「えっ。」
驚いて……思わず本音がポロリ。
「……。幸もやっぱ…カッコイイと思う?」
今度は文人のキラーパス。
受け流したかったのに、二人の視線がそうはさせない。
いや、カッコイイのは事実……。
「うん、どストライク。」
「「ええ~っ!」」
え。まずった?!
「まさかアンタがライバルだとは!」
「………は?」
「お前はもっとサルっぽいのがタイプかと思ったら!」
「…はいい?」
「「意外だ……。」」
「………。なんなのよ、も~……。」