ゆきんこ









見えてきた地元のバス停。





私はもうヘトヘトで……





意識さえも、朦朧としていた。






今………




何時……?








携帯を持つ手が……



カタカタと震えている。







「……そっか……、手袋……。」







そう。




手袋も、帽子も、


少しでも邪魔なものは……



鞄に押し込めていたから。






抱えた花束の花びらが、いつの間にか少し散っていることにさえ……



今気づいた。







カシャン……、と……





携帯が手から滑り落ちる。





今になって、寒さが……全身に襲いかかっていた。





バス停が見えてきたことに、安心してしまったのだろう。




さっき転んだ膝がじんじんして……




その先へ、行かせまいとしている。






「…………。あと……、少しなのに……。」




ペタンと雪に膝をついて……



携帯に手を伸ばす。






カタカタと震えながらも……



それを開くと。







「……やれば……できるじゃん。」





バスの到着時間よりも遥かに早く……





帰って来ていた。









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