ゆきんこ
同時に……、
突然、着信音が鳴って……
驚いた私は、思わず携帯を落とす。
その画面に、
新野の名前が……刻まれているのに。
私はそれを……
取ることができなかった。
なぜなら……。
携帯を片手に……
こっちへと駆けてくる新野滉の姿が……
そこには、あったから。
「………福嶋……っ?!」
焦った様子の新野は……
この状況を一体どこまで把握しているのだろう。
すぐ側まで来ると。
「………何で…こんな所にいんの?」
新野はしゃがみこんで……、
私の顔を覗く。
「……走ってきた。」
「……は?どこから?」
「学校近くのバス停から。」
「……はあ~?!マジで?だって、かなり遠いだろ?何でバスに乗って来なかったんだよ。」
「…ちょっとでも早く……、新野に会いたかったから。」
「………え?」
新野は予想だにしていなかったかのような驚いた顔で……
私を見つめる。
「……あれ?だって、留守電……。聞いてくれたんじゃないの?」
「……留守電……?」
「……………?」
あれ?気づいてない…?
「今さっき福嶋からの電話に気づいて折り返したら……、こっちから着信音聞こえたからびっくりして……。」
「……え?……じゃあ何で……?留守電聞いたから…ここに来てくれたんじゃないの?」
「……え?…ちょっと待って、今聞くから。」
新野が携帯を耳に当てる。
「……いいっ、やっぱきかなくて!」
急激に恥ずかしくなって、新野から携帯を奪おうとするけど……
如何せん。体に力が入らない。
「……………。……で?俺はずっとここで待ってたけど…話って?」
「………?待ってた……?」
「おう。なんか、景が突然連絡よこして…。アンタが多分7時のバスに乗ってくるっつーから……。先にこっちに帰って来てアンタを待ってた。」