ゆきんこ
「それって、ひょっとして…5時のバス?!」




「おう。そーだけど…、よく知ってんね。」



「……それからずっとここに?」



「うん。」



「……こんな時間まで?!」



「…うん?」



「…さ、寒いから帰ろうとか思わなかったわけ?!」



「いや、すれ違いたくないし、どーせ会うなら初めて会ったここが良かったから。……いつもアンタが先にバス降りるだろ?最後くらいさ、どんな顔して降りてくるのか見てみたいじゃん?……なのに…、バスには乗ってないわ、諦めきれなくて電話しよーとしたらいつの間にか着信きてて、おまけにここでヘタレこんでるし……。マジで焦った。」





新野はニカッと笑って……




私の手をとった。





その手は……



私なんかより、遥かに冷たくて。




「……寒がりの癖に…。」




私はそのまま両手で……



ギュッと握り返す。







「……。こんな所で話すのも何だし、せめてベンチに移動しよう。福嶋…、立てる?」




「……ハハッ…、どうかな?」




自力で立ち上がろうとしても……



足に力が入らない。






「……。足……どうかした?」



「……さっき固雪で転んで……」





「……マジか。世話ないなぁ…、ホレ。」




新野に支えられて……




よろめきながら、ベンチへと移動する。









目の前に。



ずっと会いたかった新野がいる。








この想いを、



どうやって伝えたら……?







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