ゆきんこ
「………。私さ……、さっき、文人と別れてきたんだよね。」





「……えっ…。何で?」





その想いが本当ならば。





どうか……、




届いて欲しい。





私の想いも。






「私も。新野滉が好きでどーしようもないから。」









一瞬の間があいて。





「………はあ?」





新野の瞳は………、



明らかに、疑いの眼差し。








この男……!





「………福嶋はさー……。」




「…ん?」




「好きでもない男とキスできるんだっけ。」




「……はあ?できるわけないじゃん。」



「でも文人とはしただろ?あれは少しでも好きだったからじゃねえの?」



「…不意打ちだもん。そりゃああの時は友達だったし、いい奴だし。……好きになりかけてたから…って、何で今そんなこと……。」




そこまで言って、はた、と気づく。



そういえば新野……、このことを気にしてたっけ。




「……ヤキモチ?」



「………は?まさか。」



そう言いながらも……。



拗ねた顔してる。




………。


不覚にも、カワイイなんて…思ってしまい。




でも…、

「どうしたら…信じてくれるの?」





これ以上、気持ちを伝える術なんて……



知らない。









「うん。じゃあ……キスしよっか。」




「えっ……?」










薄暗い街灯の下。



ベンチに座る新野と私。





周囲に人は……



誰もいない。








「好きなら、できるんだよなー、幸ちゃん。」







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