ゆきんこ
ニコッと無邪気に笑う新野。
…が、
左手でガッチリと私の肩を掴んで。
右手で頭の後ろに優しく手を置くこの行動は……?
天然に見せかけた……
確信犯ッ!!
「大丈夫。目撃者はこの雪だけ。……アンタの味方じゃん。」
「…………。」
君と過ごした日々は……
こうやって、いつもいつも雪みたいに降り続け、
溶けることなく……
想いだけを積もらせる。
「……目、つむってよ。」
「…やだね。顔見たいじゃん。」
「……やっぱやめていい?」
「…ダメ。」
「「……………。」」
「…待ちくたびれるじゃん。恥ずかしがり屋のリアクションはもういいって。」
新野はくすっとひとつ笑って……。
私の身体を引き寄せる。
行動とは裏腹に、
優しいキスは………
じん………と私の心を溶かしていく。
「今度はゆきんこから。」
「……えー……。」
「…ホラ。バス来ちゃうじゃん。」
勇気を出して……
君の胸に飛び込めば。
「………よし……、文人に勝った。」
どうやら単純な君には…
伝わるみたい。
「……馬鹿だね。」
「あ?何か言った?」
「…何でもないっ。」
「……?まあ…、いっか。よし、じゃあ帰ろうか。」
「えっ…、もう?」
「だってちゃんと幸の気持ちわかったし。」
「……でもでも、明日には……」
「……ああ、アレね。嘘だよ、嘘っ。」
「……は?!」
「福嶋を振り向かせる為の作戦。」
「……はあっ?!!」
「敵を欺くにはまずは味方からって言うじゃん?家族以外には、明日出発だって言ってみた。見事幸にも伝わったし、結果オーライ。」
「……信じられない。嘘つかないのが新野のいいとこなのに……。」
「……残念だな。景を見習って……俺も多少は博打うったワケ。」
「………も~………。」