ゆきんこ
おかしなことに、
俺が進む度に……
白ボンボンの背中が迫ってくる。
小さいからか?
リーチの差で、このままじゃあ追いつきそうだ。
一旦距離を計って………
少し離れたら、また歩く。
そんなくだらないことを繰り返すうちに……
そいつは、分かれ道で……
反対の方向へと歩いて行った。
「……………。」
こんなことをしている間に、十分返せただろうに……。
「…まあ…、いっか。」
白ボンボンじゃないけれど。
彼女の言葉はちょうど今の俺の意に沿った。
失恋も。
こんくらいに思えるなら……楽なのに。
「…………!」
まさか…………。
これ、
彼氏から貰ったものだったり……?
俺は……
ポケットから取り出したピアスを眺める。
小さな石がはめ込められた、シンプルなピアス。
「……明日……返そ。」
俺の明日はいつになることやら……。
この時から、ちょっとだけ……
嫌な予感はしていたんだ。