ゆきんこ
「……ねえ。引っ越しの準備は進んだの?」
「……おう。大した荷物もないし、後は福嶋に手伝ってもらおっかな。」
「……。いいけど……、高いよ?」
「……んじゃーやめとく。」
「………。嘘だよ、ちゃんと手伝います。」
「……ん。頼んだ。」
新野は……、
神出鬼没の自由人。
朝が早いだとか、
私がどんなに乱れた寝巻き姿であろうが、
彼には全く関係のないことで……。
「……じゃあ……、朝メシ食べて、もし時間ができたら…家に来いよ。」
「ん。わかった。」
「………それだけ。」
ん……?
「…言いたかったのは、それだけだから。」
「…………。」
「……じゃあな。」
新野は爽やかすぎる笑顔で手を振ると……
「ホント、トレーニング日和。」
わざとなのか、
そんなことを言いながら……
軽く、肩をならす。
「……新野。」
「……ん~?」
「…待っててね、そのまま。」
「……もう行くけど。」
「……いーから、待ってて。」