ゆきんこ
急いで門を出てみると……。
「あ。……いた!」
新野滉、
ただ今…
散歩中のワンちゃんと戯れ中!
……コラコラ、
なぜにご主人様とフレンドリーになってんのさ。
「……新野!」
思わず声を掛けると……
ちっとも悪びれのない顔で、
「遅いじゃん。」
そう言って。
こっちに駆け寄ってきた。
「…さすがに寝起きに走れないから…、歩いてもいい?」
「……。ああ。早朝トレーニングとか、嘘だし。」
「………。知ってる。」
最近君は。
ちょっとだけ、狡さを覚えた。
私の心を鷲掴みする為の、とっておきの嘘を……
いとも簡単に、使いこなす。
私も知っていて……騙されたフリをする。
「……てかさ…、電話でいいのにね。家に行く約束したいなら。」
「……いーじゃん。別に。」
「ただ会いたかっただけの癖に。」
「…………。」
どっちが一枚上手なのか?
そんなのは、もうどうでもいいことであって……。
「……ま、いっか。」
どちらともなく、手を繋ぐ。