ゆきんこ
東京は…どんな天気?
ひとり暮らしは慣れた?
大学で友達は沢山できた?
バスケの調子はどう?
今日はどんなもの食べた?
おいしいお店、見つけた?
お正月は…帰ってくるの?
気になること、聞いてみたかったこと。
こっちは霜が降りて真っ白だったよ。
もうすぐ、雪が降るかもなあ…。
車の免許、何とか取れた。
今度帰ってきたら、隣りに乗ってね。但し、雪で動けなくなったら…そこは新野の出番。
バイトでちょっとミスして…落ち込んだんだ。
でも、雪玉当たるのと同じ…暫くしたらすぐ立ち直ったけどね。
話したかったこと、聞いて欲しかったこと。
鳴らないスマートフォンで、何度も何度も検索したよ。
設定しているのは、東京の天気。
新野の住む場所に近い、喫茶店。
大学リーグの結果……。
でも…
直ぐに飽きて、スマフォを放り投げちゃうんだ。
便利な世の中、何でも簡単に知ることは…出来るけど。
一方的で、無機質で……
面白味に欠けている。
ねえ、いつになったら、それが…実現する?
もう、だいぶ待ったと思うんだ。
でも、待ってても待ってても…その日がなかなか来ないの。
ちゃんと…目と目を見て。
声の抑揚に…耳を傾けて。
彼の反応を…近くで見つめて。
新野の言葉で、返事して欲しいんだ。
それは、いつ……?
「……………。」
私は…下げていた手を、ゆっくり上げて。
スマートフォンの画面を見つめる。
今日は、幸いにも…金曜日。
明日、明後日はもちろん休講。
今日、お父さんがスタッドレスタイヤに換えてくれた。
太い冬用のワイパーも、装着済み。
ここまで車で来たから…免許証は持っている。
東京の天気は、晴れ。
ここから、あっちまでの距離と…かかる時間。
財布の中身。
入ったばかりのバイト代がまだ、そのまま―…。
大丈夫、ナビも付いている。
眠たくなったら、パーキングで休めばいい。
今。
新野に……会いたい。