ゆきんこ
私はぶんぶんと思い切り首を振る。


「リアクション…でっか!んじゃあ送信するよー。」



「あ、待って!」



私はすぐさま携帯を取り出して……



彼の携帯に近づける。





「…お。色違い。」



「ん。そうみたいね。」








しばらくすると………




私の携帯に、彼の名前が刻まれた。





「……俺、そういや名前教えたっけ?」



今更そこかあ~。



「ん。知ってる。」



「今みただろ。」




「違うよ。」




「………?」




「知ってたよ。楢崎さんと…一緒に帰ってた時…、楢崎さんが…名前呼んでた。」




「……そっか…。」








本当はね、



二人の会話を盗み聞きしてただけなんだよ。





だから……





そんなせつない目をしないで。






そう、あの日、あの時も………。





今日何回目かの、胸のズキズキ……。



どうなってるの、私……。








「あ。」



急に声を上げる彼は…


もう既に。
いつものキリッとした顔つきに戻っていた。






「タイムサービスの時間だ……。」



………?



「はい?」



「スーパー!やべ、早く行かねーと。」



はいい?!


スーパーですと?!



その出で立ちで?




「……金曜日……。ハッ、そうか!トモザワマートポイント10倍!」



私の声に……


今度は彼の方が、驚いた顔をする。




「福嶋……、アンタ、話わかるな。」




な……
名前よばれたぁ~!(名字だけど)




『話わかるな』だって!



そりゃあそうだよ、だって私は……






「じゃあ、俺はこれで。」



「えっ」というのが先か……



しかし新野滉は既に背を向け走り出し……




その姿は遠くなっていた。






「………。おーい……」



足…速いし……。



「人の話聞けよー……。」



てか、私も行こうと思ったのに………。






「……自由人……か。」








昨日までは知らなかった君。




遠くから見つめるしかできなかった君。







少しだけ……
近づいた君。





何かが始まるその予感に…



胸は高まるばかりだった。




人は……


案外、貪欲なものだ。





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