ゆきんこ


走り慣れた国道13号線も、県境まで走ってくると…
徐々に、街並みも…道路の状況も、変貌を遂げる。


視界の開かれた広い道路は、次第に狭く…片側一車線の山道へと突入した。

曲がりくねった…山間道路。



『栗子峠』。


数分前まであった歩道。
道を歩く人。

それらを…まったく見掛けることが、なくなった。


国道なのに、街灯も…少なくて。

ただ、対向車線をすれ違う車のヘッドライトだけを…頼りに。



吹雪いて前も見えない状況に…
いよいよ気持ちが滅入って来た。



進みたい、でも……進めない。



退避所で、タイヤにチェーンをかけるトラックを幾らか見掛けた。


路肩に車を置いて、どうしたのか…動かない車とも数台、すれ違った。



今日、初めての雪なら…。
ノーマルタイヤで走っている車も、少なくないかもしれない。









視界の悪さと、この道路状況に…次第に怖くなってきて。


自問自答を…繰り返した。




今日じゃなくてもいいんじゃないの?
(でも、明日になって、また行く気になる?)

本降りにならないうちに、引き返したら?
(でも、初雪は積もらないんじゃない?もう少ししたら、やむかも。)


諦めるくらいの、軽いノリだったの?
(…違う。でも、雪道の運転は初めてだから…)




勢い任せの、考えナシ。
突発的な行動は……本来の私とは正反対で。


その後の判断なんて…最も苦手とする所。



これが、新野なら……自分に不利になるだとか、損得などは考える間もなく。あれよこれよといううちに……自分がしたいと思うことを最優先に、行動に移すだろう。



慎重派の私が、今……出来ること。

何かに…頼ること。
情報を収集すること。


それ以外は、思い付かなかった。












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