ゆきんこ
「………いた。」
スーパーの一角。
生鮮コーナーで何かと睨めっこする彼を発見。
一方の私………
カレールーを手に取り、ちらちらとその姿を確認。
「…やば、こっち来る!」
慌てて身体を翻し……
その身を隠す。
ああ………、ストーカーじゃん。
彼がいた生鮮コーナーへ行くと……
「お、セール品…これかあ……。」
……銀ダラ。
「………煮付けにするか…。」
私はそれをカゴに入れて、こそこそと野菜コーナーへと急いだ。
「…うう…、カート持ってこれば良かった……。」
牛乳2本。
米(5Kg)を抱えたところで……
カゴを床に置き、一時休憩。
「………随分買い込んだなあ……。」
ひょいっとカゴを持ち上げて。
この場に合わないその制服姿で……
にっこり微笑むのは、やはり……
新野滉だった。
「新野くん……。」
「や、『新野』でいいし。てか、アンタも買い物なんてするんだ?」
「それ、そのままこっちの台詞だよ。」
「……。そう?」
「うん。意外すぎでしょ。」
イケメンにスーパー……。
「うち、親が共働きでおかんは夜勤もあるからさ。部活引退をいいことに…コキ使われるわけ。」
「へぇ……。」
「…福嶋は?」
「うちは父子家庭だから、家事全般父と当番制。」
「…………。ごめん。」
「や、全然!気ぃ遣わないでよ?」
「でも……」
「18年間、ずっとだから…それが当たり前なんだよね。気を遣われた方が困る。」
「…そっか。」
「…カゴ。大丈夫、自分で持つよ。」
「……俺のカゴ軽いし、それに……男だし……?」
「…………。」
紳士……?
その……照れた顔、
ヤバい……
やられたあ~……
「うん。じゃあ……、お願いします。」
「ん。頼まれた。」