ゆきんこ
4.吹雪
「おとーさーん、車、雪下ろししといたからね~!いってきま~す!」
「ありがとう、気をつけて行けよ!」
「…ハーイ!」
今日は朝から大粒の雪。
ダルマと化した車を救出し、
私は新雪を踏みながら歩いていく。
歩道は綺麗に除雪され……
車道との間に、高い高い境界線をつくる。
その高さ、数メートル。
今年は……
なかなかの大雪だ。
バス停までは、20分足らず。
私はさほど急ぐことなく……
雪壁に、人差し指の一本線をつくりながら……
のんびりと、歩いた。
間もなくバス停という所で……
すぐ後ろから、雪踏む音が聞こえてきた。
私を追い抜かしたと思ったら……
相手はくるりと振り返る。
「………あっ…。」
私は思わず呟いた。
「……やっぱり!その白ボンボン、福嶋だと思った!」
「……新野。」
帽子でバレちゃったか…。
「…てか、そんなんのんびりしてていーの?バス時間、過ぎてねえ?」
目の前に現れた新野は、不思議そうに首を傾げる。
「バス……、10分以上はいつも遅れるから。」
「………。あ。……そっか。」
なるほど、と小さく呟いて。
彼は私の隣りに並ぶ。
「…なんだ、焦って損した。」
「…………。ねえ、今更だけど…。朝いつもバスに乗らないよね。…なんで?」
「…ああ。朝、バス待つのだりぃし、運動がてら走って行ってる。」
「えッ!南校まで?」
「……おう?」
すご……
けっこー遠いのに。
「今朝は完璧寝坊。駐車場の入口にブル(※除雪車のこと)が毎朝雪置いていくから、雪掻きはしなきゃいけないし、さすがに間に合わないから…今日はバス。」
「へー…、偉いね。毎日してるんだ?」
「日課だし、大したことじゃねえよ?」
でも……、
寝坊してくれて、嬉しいと思う自分がいる。
いつもいつも、君を待つのは……
バスの中からだったから。
バス停に着くと、新野は早速、時刻表と携帯を見比べた。
「…10分過ぎてんな……。」
「…ね、だから結構のんびりで大丈夫なの。」
「ふーん。」