ゆきんこ
「馬鹿やろ、レディーファーストだっての。はい、野間。席あっためといた。」




新野は荷物を持って立ち上がり……



咲に、席を譲る。



顔を真っ赤にしながら……


咲はゆっくりと腰を下ろした。



……嬉しそう。





「…おうおう、テメー紳士ぶってんなよ?」


「バッカ、当然だろ?」


「キモいわ。」









そんな……男子の会話を聞きながら、私達女子二人は無言のまま。




そして……



バスはすぐに、南校前へと到着した。




「……じゃあね、咲ちゃん、幸ちゃん。」


「……バイバイ。」




瀬永たちに手を振る。




そして最後に……




「あ。」



新野がくるりと振り返り、私の方を見た。



「……。な、なに?」




「返事聞いてなかった。」




………ちょっと……。



今……、ですか?!




隣りには、不思議そうな顔をする咲。



ひぇ~……
ど、ど、どうしたら?!




「……あ、別にいつでもいっか。そんじゃ、また。」



「…え、あの……。……って、行っちゃったし…。」





自由人……、
健在。






さて、咲に何を聞かれるか。


…と、覚悟したけれど……。





意外にも、咲は何も言わなかった。










< 33 / 234 >

この作品をシェア

pagetop