ゆきんこ
「幸~、待ってた!早く来て~!」
教室で。
私を待っていたのは、やはり……
文人だった。
「数Ⅲの課題……忘れてました。……お願いしますッ、教えてください!」
ガバッと頭を下げて、平気で土下座する文人。
「……仕方ないなぁ…。」
そんな文人に激甘な私。
「あっま~い、幸。」
いつものように、咲の叱責が飛ぶ。
「お前は血も涙もねーな!基本部活漬けで勉強遅れまくったんだもん仕方ねーだろ。」
「そりゃウチらもだっての!」
プチバトルは日常茶飯事。
そんな文人が属したバスケ部は……
県1・2を争う実力者揃い。
最後の大会は、ライバルである南校に分配が上がり……
全国大会への切符を逃していた。
ウチらバレー部とは比べものにならないくらい、遅くまで練習に明け暮れたことを……
私は知っている。
「あのさあ…、そんなんだから南校に負けるのよ。あっちは進学校だよ?ウチらよかもっと大変でしょうに。」
「まあまあ、咲ちゃん…。」
二人のバトルを仲裁するのも、私の役目。
「ほら、文人。早くやっちゃお!」
「ううっ、お前はいいヤツだ……。」
こんな風にして……
朝は文人と二人、勉強会。
私は復習も兼ねているから、逆にそれが身について……
有り難かったりもする。
ああだ、こうだと言いながら……
問題を解いていくと……
「……。ねえ、文人。」
咲がぽつりと呟く。
「……あんた、いつまでもこのままでいーの?」
文人のシャープペンを持つ手が……
止まった。
「……ナニ?」
「もうすぐ卒業だよ。」
「………わかってる。」
………。なに?宿題の話?
「……うかうかしてるとさ……」
「…ん?」
「また、南校に負けるよ。」
「……は?なにそれ。」
文人の顔が……
険しくなった。
また…、プチバトル開始?!
「………。あ。そうだ!ねえねえ、幸っ。南校って言えばさあ、今朝のアレってなんだったの?」
突然、その矛先が私に変わる。