ゆきんこ





ゆらり揺られてバスの中……。




いつものように、窓側に座って……



見えない窓の外を、じいっと見つめる。



いつもとは違う午後。




何故かってそれは……




「すげー吹雪だな……。」



「…ホント、すごいね。」





隣りに乗っているのが……




文人だから。




咲は変な気を遣ったのか、一本遅いバスに乗るって言って……、今ここにはいない。



相手は文人なのに……。



何だか違う人に見えてしまう。



初めてバスに乗る文人は、キョロキョロ辺りを見渡して…


どうやら楽しそう。



何より意外なことに、女子高生の羨望の眼差しが……

明らかに、私に向けられていることがわかる。




そういや文人って……


よく、学校で告白されてるっけ。



連れて歩く女の子はいつもかわいい子ばっかりだけど、どれもこれも長続きした試しはない。


…て言っても、本人と恋バナすることはないから……


ホントのことは、何も知らない。




「…何も今日じゃなくても良かったか……。」



吹雪に恐れをなしたか、文人はふうっと溜め息をつく。




「いや、寒い日に冷たいものを食べるのもオツなもんだよ。」


しょげる文人の肩をバシっと叩いて励ます。



「幸は優しいよなあ、マジ。ったく…、咲が煽るから。」



「…………?」



「や、何でもない。つーか、お前何くうの?かなり好きだろ、あそこのアイス。」



「んっと……ベリーチーズケーキかな。」



「……チーズ?それはまた変わったものを……」



「おいしいんだってそれが!」



「…へぇ~……。」








しばらくすると……



そう、いつものように…


あのバス停の前で、バスが止まる。





アイドリングストップした車内は……


一気に寒くなる。




ひゅう~……と、窓の外から……


風が唸っていた。






そして……



和気あいあいと、乗り込んでくる彼ら。



ああ……、
なんとなく気まずい。



どうか彼が……


新野が気づきませんように……!







< 38 / 234 >

この作品をシェア

pagetop