ゆきんこ
バスを降りると……、
そこは大荒れ。
「女子高生って寒くねーの?生足出して。」
「……文人どっかの親父みたい。」
「…うるせーな、風に飛ばされんなよ。」
「…え……?」
文人の手が……
ガッチリと私の腕を掴む。
「ホレ、ちんたらしてんな。」
振りほどく訳にもいかず……。
吹きっさらしに……
足が樹氷になっていくのを感じながら……
そのまま、半歩後ろを歩いた。
その後方に……
聞き覚えのある声が…、聞こえてくる。
なんだ……、
新野たちも……遊びに来たのかな。
プラザに着いて……、
私たちは、互いに雪をほろい合った。
「……なんか……、文人が真面目に見える。」
「あ?なんじゃそりゃ?」
「…だって髪がペチャンコ。」
いつものヤンチャな感じの面影……、なし!
「……ますますいい男だろ。」
「さあ…。」
「テメ…、うんっていっときゃかわいいのに。」
「……ど~せかわいくないも~ん。」
「………。かわいいよ、幸は。」
「………へ?!」
今のは………
文人の言葉?!
なに……、なんなのコレ。
さっきといい、今といい……
調子、狂っちゃうじゃん。
「……わ、新商品出てる……。ど~しよ~!」
ショーケースにかじりついて……
吟味する。
「…ダブルにしたらいいじゃん?」
「なるほど…、じゃあ欲張っちゃお!すみませ~ん、ベリーチーズケーキと、ザッハトルテのダブルひとつ。」
「…それと、バニラとチョコミントのダブル。」
文人が財布からお金を出す。
「…ちょっと待って!いーよ、自分で払うから。」
「後ろ並んでる人いるし、今日誘ったのは俺だから…、いいよ。次回何かおごって。」
「…………う、うん…。」
『次回』……?
「ありがとう。」
「…なんだよ、アイスくらいで。……ハイ。」
文人からアイスを受け取り……
私は数少ない席を、先に陣取った。