ゆきんこ
ならばいつか……
伝えることはできるのか……?
「…………。」
もうすぐ……
私達は、高校を卒業する。
バラバラになる進路……。
「………もう、無理だよ……。」
私に……
私達に……
時間などなかった。
『いつか』なんて言葉がないことに……
私は、今頃気づいたのだ。
それは……
もしかしたら、文人にしても同じだったのかもしれない。
優しいキスは。
切ないくらいに、『好き』の気持ちが詰まっていて……
あの一瞬に。
彼は全てを込めていたのかもしれない。
3年の付き合い。
その長い月日の中で……
彼を、最も近くに感じたあの瞬間……。
何故今頃……
新野に出会ってしまったんだろう。
迫りくる別れの瞬間。
その目前で………。
もし君に出会わなければ、こんなにも苦しくて、切ない気持ちを……
知らなくてすんだのに。
好きって気持ちがなくなれば………
もっと、
私は楽になる。
この恋は……
実ることなんてない。
そう知っているから……
溢れ出ることがないように、
忘れてしまおう。
たまたま出会った新野滉は……
私の憧れで、手の届かない人。
そう思えば……
綺麗なまま、思い出に残る。
自分が傷つかずに済むから………
「…………頑張れ、私。」
いつもの日常を思い出して。
また、元の自分に戻ることを………
決めたんだ。