ゆきんこ
翌日の学校ほど……、
緊張するものはなかった。
さて、どんな顔して文人と会ったらいいかと考えて……
教室のドアの前を行ったり来たり。
「おっはよー、何してんの?はよ中入れよ~」
「…………?!」
背後から……
聞き慣れた声がして。
私に代わって、ドアを開く。
「……ささ、どーぞ。」
「……ありがとう。」
私はされるがまま。
誘導する文人に従って……
先に教室へと入った。
変な感じがした。
なぜなら3年間。
いつも文人は先に登校していて……
主人を待つワンコのように、私を出迎えていたから。
朝練の習慣がついていたからか…、部活を引退してもなお、その日常は変わらなかった。
「あっれ~?文人遅いのめずらしーね。」
目ざとい咲。
「………おう。珍しく課題してきたもんで。お陰で寝不足。」
「………マジ?雹でも降ってくるんじゃなかろうか。」
「…なんだソレ。俺だってやるときゃやるの!」
「……。ふ~ん?」
こう言っちゃ失礼だけど……
本気で珍しい。
恒例の勉強会がいっこうに始まらないことに、いち早く気づいたのは……
咲だ。
「……なに?なんなの、この妙な空気。幸、アンタたち……何かあった?」
……う……、
いきなり……核心?!
「……何かって?」
「………。そうだな……、例えば…」
咲は、他の男子とたむろしている文人に……
チラリと視線を移す。
「…例えば。……文人に告白されたとか。」
「……………!」
思い切り、大正解。
驚き過ぎて…
持っていたシャープペンをぽとりと落とす。
「わぁお、マジで?」
咲はいよいよ身を乗り出して……
「で、で?」
話を催促している。