ゆきんこ
「昨日いきなりデートに誘うからさあ。絶対何かあるって思ってた!てか…、とうとうか…。くぅぅ~、文人のヤツ、漢だの~!」
「……ちょっと待ってよ。とうとうって?」
「や。幸、あんたくらいだからね?あいつの気持ちに気づいてなかったの。」
「……は?」
「みんな知ってたよ?あんだけアピールしてたのにさあ…、当の本人がこんなんだから……。さすがに同情するわ。ずっと片想いのままだったからねえ。」
「…でも…、彼女いたよね?」
「…そーだね。どれもこれも長続きしなかったけど。まあ…、そりゃそーだ。大本命がこんな近くにいりゃ。」
「………。」
「…そしてそして…?返事は?」
返事も何も……。
突然のキスで、それどころじゃあなかった。
「…返事は……してない。」
「…えっ。じゃあ…これから…?」
「……。そう…なるよね。」
「……じゃあ、きっと今頃…内心ドキドキな訳だ。」
「………そうかな。いつもとあんま変わらなくない?」
「そうでもしないと、やってらんないでしょーよ。でも…、やっぱおかしいって。」
「…………。」
「今日は幸に絡みに来ない。」
「………。」
……そうだね。
こっちを…見ようともしない。
「……文人は…、いいヤツだよ。」
「うん。知ってる。」
「……それに………カワイイ顔してる。」
「…うん、それも知ってる。」
「…それに…、幸にだけ、特別優しいし……」
「…それは…やっぱりそうなの?」
「…ちなみに私には興味ナシ。」
「…いや、それはあまりに毒を吐くからでしょう?」
「…で、アンタはホントのホントに気づいてなかった?」
「……それは……」
「そこまで、鈍くはないでしょう?」
「…………。」
「…さあ、今すぐゲロ吐け。」
「…………。」
「…言わなきゃこーするよ。」
「…………!」
咲の手が……
私の両腕を、ガッチリと掴んでいた。
「……まさか……」