ゆきんこ





「…焦る必要あるのかな。だって……あいつ、彼女でしょ。」



「…………。」




「…はい、ここで質問です。私は今、誰の話をしているでしょーか?」



「………に…、新野…?」



「……正解っ。…じゃあ…、第二問。アンタは、新野滉のことが……好きなんじゃないでしょーか?」




「………そ…、それは……」




「……文人の想いに応えられないのだとしたら、好きな人がいるって思う方が……自然じゃない?」



「…………。」




「…それにホラ。名前出しただけなのに……、顔が真っ赤。」




「…………!」




「……上手いいい訳できないのはアンタのいいとこだね。……認めな。」





ホント……、もう



咲には敵わないな。






「………認めます。」






言っちゃった……。





「……よろしい。…では…、第3問。」



「え。まだあるの?!」



尋問はもう…
カンベンして~!!





「………譲って…いただけないでしょうか?」






…………。



……え……?





「……さ、……咲?」





それって……、


それってさ……。





「譲って……、もらえないかな。」





ねえ、それは……


咲は、咲は……










「……あの…」…と、私が言うのが早いか、



咲の手がニュッと伸びて来て……






ほうける私の手から、あっさりと…チョコチップパンを。




……奪った。





「……あれ……?」






なんだ、コレ。





「あいつ(楢崎)は神か、…購買競争の。」



「……は?」



「…いつも譲ってもらって悪いねぇ、ホント。」




「………。」



『譲る』って……、




チョコチップパンのことかーい!!?




「……あほらし……。」




またそうやって茶化して……。



動揺した私がアホみたいじゃん。






私は…踵を返す。





なのに……





「…待ってよ。」





咲の手が……



私を制する。





「……ごめん。茶化したかった訳じゃない。」




「………?」



咲の方を見ると。




彼女は俯いて……



顔をあげようとはしなかった。
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