ゆきんこ
「………。どうしたの?」




何だか…
様子がヘン。





「ただちょっと…、幸がライバルならやりづらいなって。」




「……購買競争が?」




「オイっ。そこはボケるとこちゃうで。」




……。


なら……





「………恋愛の……話?」




咲は……



黙って頷いた。



ライバルってことは…
「それはつまり。咲は……文人が好きってこと?」




あんなにベタ誉めしてたもんね……。




「…今、マジボケしたっしょ。」




「…………。」



……あれ……?



違うの……?





「アンタと私じゃあ真剣な話にならないもんだねぇ…。」



咲はふうっと長い息を吐いて……、




それから……




「…確かに…、まだあんまりあの人のことは知らない。でも……仕方ないじゃん。理屈なんてないし、好きだってそう思ってしまったんだから。」




「…………。」




「…ハッキリ言うと。…私は……、新野滉が好き。」




「…………!」






いつもいつも…


咲の意思はハッキリしていて。



それがどんな相手でも変わりなんてなくて。



私は彼女を…


どれだけ羨ましいと思っていただろう。




けれど今は……



ちょっとだけ、悔しい。




堂々と「好き」って言えることが……。





「…ねえ、アンタは?」





ようやく顔を上げた咲は、私の目を捕らえて……、離さない。







「……私も……、新野が好き。」







そんな言葉が出たのも。




彼女の瞳にのまれそうで……



なんとか、跳ね退けたいと思ったから。





「……言ったね。」




「おうよ。言ってしまったとも。」




「……じゃあ…、うちらは今からライバルだ。」




「………だね。」




ライバルって……



これから私たちは、どうなるの……?




「…よし。スッキリしたとこで早く教室戻ってパン食べよー!」




「……は……?」




待って、なぜに…普通?!




「…馬鹿だねえ、ライバルと言えど、ここに奴はいないし…争う理由はないでしょ。戦いは…放課後。友達やめよーだなんて、間違っても考えてないからね?…つか、文人にゃ悪いが、正々堂々と戦いたいじゃん。」



「…咲……。」
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