ゆきんこ
そして……



放課後。




結局いつもよりも口数の少なかった文人に手を振って…



私達は、教室を後にした。





咲は言う。




「悪いだなんて思ったらそれこそ文人に悪いよ。いい?恋愛って誰かを犠牲の上で成り立つものもあるんだから。」





………私には……



彼女の語る「恋愛」が、イマイチ理解できなかったけれど……




「もしもうちらのどっちかが新野と付き合うなんてことになったらさ、互いに犠牲になるんだからさ。」




……最もなのかもって思い始めた。












バスに乗って。




「アンタのあの落書き。こっそり奴を盗み見する為だったとか?」





ライバルになると、こうもやっかいな(?)相手になろうとは……



予測できていなかった。



「違うもん。見よ、新作っ!」




いつか君が……




新野が描いたドラ〇もん。



見よう見真似ねで………



描いてみる。





「……今までのよか、何故か上手だし。」




苦笑する咲をよそに……



指跡から見える君の姿に。



うっかり目を奪われた私。




「…やっぱりそうだったんじゃ~ん。」





………。

あほだね、私…。墓穴掘った。







南校生がぞくぞくと乗ってきて、私は気まずくて……



視線を下に落とした。




……と、




咲が席を立って……




一番後ろ、新野達の元へと…行ってしまう。




なんて行動力!



すっかり感心していると……





「…ゆきゆき、今週末だって!」



揺れるバスにバランスを奪われながら……



咲が私の元へと戻ってきた。




「………え。」



行くことに……なったの?!



「瀬永達も一緒だけどさ。みんな乗り気だって言ってた。」



「…で、でも……。」




「…気にしてないみたいだよ、新野。アンタからメールの返信なかったこと。」



………!


気にして……ない?




私はくるりと振り返る。



と、同時に……



新野とバッチリ目が合った。





やば……、

どうしよ……。




一方の新野は。


ちょっぴり気まずそうに……



にこりと笑った。





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