ゆきんこ




私はバス停に着くなり……




一番にバスを降りた。




湿った重たい雪が出迎えて……




「……今日は積もるか……。」




ふと、空を見上げた。







「……デカイ目に雪入るぞ。」



「…………!」




目の前に。



新野の顔がどアップ!




慌てた私が顔を元に戻したら……



おでこが新野の顎にクリーンヒット!!





「……ご……、ごめん!ごめんね!」




顎を抑えてしゃがみ込む新野の顔を覗きこむ。




うっかり……、



彼の腕を掴んで。




……その距離、数センチ!!




「……ご……、ごめん!」



この気まずい体勢に…



慌てて顔を逸らすと…、




「……ん?」




今度は新野が私の両腕を、彼の大きな手で……



抑えつけた。




「……………。」




一体何が起きているのか。




その顔が……


次第に近づいてくる。




「…………。」



為すすべないまま……



目を見開いて。



彼の長い睫毛をじっと見つめる。






「………ストップかけろよ。」




ぴたりと……



動きが止まる。



「好きでもない奴と、キスできるの?」




それは昨日……


君が私に投げかけた言葉。






返事を……
しないままの。







「……じゃあ新野は……、好きでもないコにキスするの?」




「……………。」





数秒間。





驚くくらいの至近距離で……



私達は、睨めっこ。









「………アンタからかうと面白いからさ。……つい。」



「……は?」



「…つーかさ、雪すごくねえ?」



「…まあ…、うん。」



「…週末は絶好のボード日和だ。」



「……うん。」



「……なあ、俺ら…変じゃね?」



「……は?」



「こんな小さくしゃがみ込んでさー……、そのいち雪に埋まるってか。」



「…………。」




「………ホラ、早く帰んべ。」




先に立ち上がった新野が……



私の目の前に、手を差し延べる。




私はその手をぎゅっと握って……。




「…よいしょ、…と。」



重い腰を上げる。
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