ゆきんこ
6.秘密のデート
週末……
おそれていた事態が起こる。
『嘘ぉ、マジで~?!』
電話の向こう側で嘆くのは……
…咲である。
「仕方ないよ。」
『でもでも、新野が行かないなら私も行かない!』
「…え。……咲が行かないなら私も行けないよ!あんま瀬永くん達のこと知らないし。」
『次の約束取り付けなくっちゃ!……ああっ!私新野の番号知らないし!』
「はいはい、わかったよ。私から伝えるから。」
『うん、絶対だよ!』
念を押す咲の口調があまりにかわいらしくて……
恋する女のキラキラした顔が容易に想像できた。
一方の私は……
「幸~、早くご飯にしてくれ!」
「…ハイハイ!ご飯よそってて!」
出勤時間が迫る父の…
専業主婦?
「…じゃあ、咲。また学校でね。」
『うん。…あ!ちょっと待って!今から新野に連絡とるならさ…、』
「………?なに?」
『私も新野の携番教えてもらってもいいか聞いて?』
「……うん、わかった。……じゃあね。」
電話を切って。
深いため息を…ついた。
新野が断る訳なんてない。
あんなにもアッサリ……、私とも、ましてや赤の他人とも番号交換しちゃうんだから。
咲と新野が直接繋がったら……
私なんかより、もっともっと速いスピードで……
二人は近づくだろう。
「…仕方ない……、か。」
私は再び携帯を開いて……
新野の名前を探す。
……と、
「…幸!みそ汁冷めるぞ。」
「……あ、ハーイ!!」
結局それはかなわず。
とにかく…、瀬永達に断りの連絡を入れてもらうように、その内容だけを打ちこんで……
新野にメールした。
それから、携帯を部屋に置いたまま。
私は……一階へと階段を下っていった。