ゆきんこ
悔しいな。
私ばっかりがドキドキして。
新野は……
キスなんかもう経験済み…なんだよね、きっと。
「……………。」
キス………。
ああ……、
私もキス……したんだっけ。
あの時は、ほんの一瞬で……
思いもがけない相手だったから、
油断したっていうか……
意表をつかれたっていうか……
「……うわぁっ!」
ダメだ。
恥ずかしすぎる!
「……お~い、福嶋~?」
ハッ……!
「アンタってホントにおかしな奴だよなあ、何考えてたの?」
本日、妄想注意報発令ッ!!
「………ご、ごめん、何でもない。」
「そう?」
「そう!」
「……。おい。ゆきんこ。」
陸くんが……
変な人を見るような目で、私を見つめる。
「…ジュース、俺にもちょうだい。」
「…は、ハイっ、どうぞ!」
受け取った陸くんは、ごくんと美味しそうに喉を鳴らして…、それを飲んだ。
「ガキはあんま炭酸飲むな。」
途中で新野に奪われて、
最後に彼が飲み干す姿を…、恨めしそうに、ただ眺めるしかなかった。