ゆきんこ






チキンライスに乗せられたオムレツを、新野がナイフで切れ目を入れて……、


とろふわの半熟卵が、皿いっぱいに広がる。




「ヨシ、完成!!悪いけど、あっちまで運んでくれる?」



「…うん。」










陸くんが待つ、こたつテーブルの上に…オムライスを置く。




…と、ほぼ同時に、



「……メシだ!」



なんという寝起きの良さだろう。



ぐっすりだった陸くんが、飛び起きた。




「……ホントに起きた。」



さすがは兄貴。よくわかってるなあ……。








三人、コの字の位置に座ると……



いただきます、と声を揃えて、私はオムライスをひと口パクリ。




「……ん?」



何故か私をじっと見る新野。




「……どう?」




「……最高に……美味しい!」




「……だろ?」




「クレイジーソルト、いい味だね。」



「うん。」






よほど美味しいのか…、陸くんは無言のまま、黙々と食べ続けていた。




「…ねえ、陸くん。」



「ん?」



「おにーちゃんが作る料理で、陸くんは何が好き?」



「俺?何でも好きだけど?」



「……そっか。」



バスケの話題の時とはうってかわった、陸くんの素直な返答。




料理の腕は、認めてるんだ?







「………ごちそうさま!」




お皿の上にはご飯粒ひとつ残さずに…陸くんはあっという間に完食!



食べたお皿を台所へと運び、



戻って来たかと思うと………






「………え。嘘?」




横になった彼からは、またもや一定に整った寝息の音が……!





「マイペースな奴なもんで、悪ぃーな。趣味はスポーツと睡眠。」




「………兄貴譲り?」




「……は?」




「……そっくり。」



「そうかぁ~?」






チラッと陸くんの顔を覗きこむ。



ちょっぴり生意気な口元が、大いに緩んでいて…、



その寝顔に…、ほっこり。





「……ねえ、新野。」



「ん~?」








「どうして陸くんは、私を『ゆきんこ』って呼ぶの?」








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