ゆきんこ
「………。ああ、それ?それは……、名前が『ゆき』だからじゃねーの。」
「……でも、なんか変なこと言ってたし。」
「そうだっけ?」
「うん。『雪の子供なのか』とか…。」
「……ふ~ん?まあ、でも、ピッタリなあだ名じゃん。可愛らしいし、福嶋にピッタリ。俺もそう呼ぼうかな。『ゆきんこ~』って。」
何をもって私にピッタリだと豪語するのかはわからないけれど……
新野にそう言われたら、何だかその呼び名が……
愛しく思えた。
そしたら急に恥ずかしくなって……
私は、もくもくとスプーンを進めた。
「…ごちそうさまでした!」
「…大したもんじゃないけど。お粗末さま。」
私は先に食べ終えた新野のお皿も持って…立ち上がる。
「…いいよ、そんなのしなくて。俺するから。」
「ううん。このくらいはさせて?新野こそ、少し休んでなよ。」
「………。うん…、ありがとう。」
新野が仰向けにゴロンとなりながら……
こっちを見た。
「…………。」
デコ全開……。
上目遣いが、見事にハートを射抜く!
ずきゅ~~ん!!
心でキャーキャー騒ぎながら……
台所へ。
……食器を洗い終わると。
一旦呼吸を整えて……、
それから、新野が待つ部屋へと……急いで向かった。
「…………!!」
そこにいた新野は……。
ほんの、数分の間だったっていうのに……
何とも幸せそうな顔で………
夢の世界の住人となっていた。
「………やっぱそっっくり!」
兄弟二人の無防備な姿を見比べて……
私はくすりと笑った。
「あ~あ、もう…、どないせいっちゅーのよ。」
そう言いながらも。
ちょっぴり幸せ気分。
なぜなら、まるで私に気を許してくれているみたいで…。
「かわいいなあ、悪戯しちゃえ。」
誘われるかのようだった。
ドキドキばかりさせられて、
挙げ句そのまま放置した罪は重し!