ゆきんこ
『ただいまー……。』
「…………。」
『陸~?…滉~?』
「……………。」
誰かが……
二人を呼んでる?
『景ちゃん?いるの~?』
「………?」
『ケイ』ちゃん?
「……………コラ!滉ッ!!」
「………?!」
誰かの叱責の声に。
私はパチリと目を開けた。
「…………あら…。起こしちゃった、ごめんね?」
「………!!……す、すみません!!」
急いで身体を起こそうとするが、右手が例によって拘束されていることに気づいて……
うまく起きれない。
一方の新野は、ゆっくりと目を開けて……
「おはよう、福嶋。」
呑気にご挨拶。
「バカ息子!『おはよう』じゃないよ。」
女の人のゲンコツが……
新野の頭に向かう。
「……いってぇ~……。」
頭を抑えようとしたのか、彼は私の手を引き連れて……
こたつから、手を出した。
「「……………。」」
その、握られた手に。
私も、新野も、女の人も……
一瞬、黙りこむ。
「………。ごめん。」
新野は驚いた顔で……
パッと手を離した。
無意識……だったのかな。
「………。福嶋。コイツ、俺のおふくろ。」
「コイツとは何よ!」
再び頭を叩かれて……
新野は面倒くさそうにしている。
「……はじめまして。」
こんなに若くて、綺麗な人がお母さんだなんて……。
なんて、羨ましい!
「はじめまして。えっと……」
「……福嶋 幸。西校の友達。」
「西校?アラ、じゃあもしかして、景ちゃんの……」
「…余計なこと、言わなくていいから。」
「…………。」
……ケイちゃんって、もしかして……。
楢崎 景のこと……?
「……全くもう。アンタのことだから、お客さん放っておいて寝ちゃったんでしょう?ユキちゃん、ごめんなさいね。ホンッと奔放な息子で……。」
「……いえ!とんでもないです!」
にっこりと笑ったお母さんの顔が……
新野とよく似ていた。