ゆきんこ
「ゆーき、どうした?」
学校の窓際で、大きく溜め息をついていると……
文人がポンっと肩を叩いた。
「……うん……、ちょっとね。」
「………。恋煩いか?」
「…何でそうなるの?」
「そういう風に見えたから。」
「……違うよ。」
「……ふ~ん……。」
「……ってか、友達と…喧嘩した。」
「………。咲…ではないよな。俺……、でもないし。」
「………。」
「ああ。……新野か。」
「………。」
文人のカンの良さを侮ってはいけなかった。
今、文人に……
こんな話、すべきでもない。
「お前が喧嘩って…、一体どんなのだよ。見たことも聞いたこともねーな?」
「……うん。」
そうかもね。
争いごとは嫌いだから……
そうならないようにって、先に牽制するから。
「……よくわかんねーけどさ、ちっちゃいことでも放っておくと…いつの間にかとり返しつかなくなるぞ?俺、経験済み。」
「…文人は喧嘩っ早いもんなあ……。」
「…コラコラ。気持ちをぶつけ合うと言ってくれ。まあ……、自分が少しでも悪いと思うなら、謝ったもん勝ちだな。そうすると、案外相手も同じこと思ってたりして……、意外とすんなり仲直りできるって訳だ。」
「…喧嘩の原因がハッキリしないのに?」
「………?ハッキリしてないのに喧嘩なんてなんの?」
「…………!」
「原因があるから、喧嘩するんだろ?」
「…………。」
原因は………?
何をそんなに、私はイライラしてた……?
そして……、新野も。
「それで謝っても失礼な話だな。一回ちゃんと…話してみたら?」
「……うん。」
「ま、幸には俺もいるし、そんなに暗くなるなって!」
背中をバシっと叩いて…
いつものように、楽しげに笑い飛ばす文人は……
やっぱりいい奴で。
咲がそう言っていたように……
迷いなく、その胸に飛び込んだなら……
幸せになれるんじゃないかってさえ思う。