桜の生け贄
「それにしても、悠輝くん気合入ってるね~」

気づいてくれた。

嬉しかった。

俺は反射的に顔が真っ赤になった。


「いいなぁ~都会人は!!」
「そーでもねぇ~よ!?夏は暑すぎるしさぁ。」
「あ~そうだね~この村は結構涼しいのと、桜が良いところなんだよね~」
「桜…?」

俺は聞き返した。

そして思い出した。


土曜日、ここに着いた時、桜が綺麗だと思ったこと。


「そうだよ。沙雪学校の桜は特に綺麗なんだよ。」
「なんでだろな?」
「……わかんないよ…たぶん環境がいいんでしょ?それ以外ないでしょ?」



…?なぜ今、間が出来た?


あずさはズバズバしてる性格だから、言葉に迷うことなんてほとんどないのに…


でも聞けなかった。

深い意味がありそうだったから。


きっと聞いたら、嫌に思うだろうから…


嫌われたくなかったから…



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