桜の生け贄
俺は気分が悪すぎるが、重い体を引きずって窓からあずさが出て行くのを確認しようとした。

…あれ?出てこない…?

「ねえ。悠輝くん…?」
「ギイヤアアアアア!!!」

俺はフッと息を出すあずさから距離をとった。

「んも~なによぅ~あはは!調子はどお~?

あとチョコケーキは美味しかったかな~?」

「…もう俺に近づかないで…」

…こんなこと…本音じゃない…

でも…命のほうが…大切なんだよ…

悪い…

ごめんな…あずさ…



あずさはしゅんとした顔をして、下を向いてうつむいた。

しばらくしたらあずさはこっちを素早くこっちを向いて、

「そっか…付きまとってごめんね…」
「あ…あずさ…?」
「これが…最後のわがままだから…」

その声も冷たかった。

その瞬間に嫌な予感がした。

だが逃げれなかった。

あずさのほうが動くのが速かったからだ。

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