甘い唐辛子
俺はいつでも断ろうと思えば出来たよな?
怒鳴り散らすことも、抵抗も、反抗も出来たはず。
俺はどうしてしなかったんだろうか?
「…俺、なんで婚約破棄しなかったんだろ…」
「はぁ?」
「お前、霞澄さんのこと好きなんだろ?」
無意識に呟いた言葉に、返事を返したのはもちろん目の前にいる2人だ。
「は!?俺が!?」
「他に誰がいるんだよ」
「うわ…鈍感!」
信じられない!!という大袈裟な反応を見せる希波矢とは違い、海は黙って俺の反応を窺っていた。
俺は俺で、初めて言われたことに自分でも驚いていた。
俺は、他人を好きになるなんて無いと思っていた…
だから……
どう表現したら、どう言葉にすればいいのかわからないが、とりあえず顔が赤くなったのがわかった。
「図星みたいだな。自覚できて良かったな。」
海は、俺の髪を乱暴にガシガシとかき混ぜ、柔らかく笑った。
その笑顔が、俺には輝いて見えて、何がそんなに輝かせたのかが気になった。