甘い唐辛子
「ははっ…婚約指輪っすか?いいっすね。似合ってますよ、お嬢。」
ヤスさんの笑顔を見た後、なぜか私の第六感が働いた。
『作り笑い』
ヤスさんの笑顔は、本当の笑顔じゃなかった。
「ヤ……「ではお嬢、俺はもう寝ます。おやすみなさい。」
私の言葉を遮って、ヤスさんはさっさと中庭を出て行ってしまった。
一体なんなんだ。
維十といい、ヤスさんといい…
どうしてみんな、こんなに変なんだ。
ため息を1つ吐いて、ベンチから立ち上がった。
明日も面倒な仕事がある。今日は早めに寝て、明日に備えよう。
私は、もう一度星空を見直してから、中庭を出た。
私の後ろ姿を誰かがジッと見ているのにも気付かないまま……