甘い唐辛子
「維十は、大学行くのか?」
「いや、行かないでここ継ぐし。」
「そうか。」
霞澄は整理し終わった資料をまとめて、小脇に抱えてドアに向かった。
「霞澄!」
「?」
「…なんでも無い…」
不思議そうな顔をしたまま霞澄は部屋を出て行った。
俺は本当にバカだ……
霞澄を引き止めて、
もう少しここに居ないか?
なんて言おうとした。
バカにも、恥ずかしいにもほどがある。
熱くなる顔を両手で覆い、大きなため息を付いた。
この頃、無意識に霞澄に触れようとする自分が居て、本当に困る。
なんで、こんな…
自分の気持ちを押しつけるようなこと…
触れようと、伸びた手を、必死で引いたのは恥ずかしいからだけではない。
霞澄を大切にしたいのに
霞澄を抱き締めて
俺以外の誰にも見られないように
消してしまいたい
汚してしまいたい
なんて
霞澄を、最低な考えを持つ俺から、離す為でもある。