甘い唐辛子
「彼女の名前は藤成 霞澄(フジナリ カズミ)さん。君達と同い年。高校には行ってないんだって。なんでも、家業を継ぐらしいよ。」
「家業?」
「うん。何かは、僕にもわからない。家業を継ぐのが18歳になってかららしいから、それまでバイトするんだそうだ。ここには1週間前から入ってもらってる。」
「へー。兄貴、惚れた?」
「うん。惚れた。一目惚れ。」
ハッキリと言い切った未緒さんは、ニコニコと笑っていた。
冗談のつもりで言った希波矢は、未緒さんの答えに目を見開いて驚いている。
ま、当たり前の反応だろうな。
未緒さんが惚れた女がいるなんて話は、今までに聞いた事がない。
未緒さんは女に惚れられる事があっても、惚れることは無かった。
男が好きって訳ではなく、ただ単に未緒さんが惚れれる女がいなかっただけ。