甘い唐辛子
掲げていた缶コーヒーを霞澄に手渡す時、微かに手が触れた。
そんな事で跳ねる心臓ほど、邪魔な心臓は無い。
霞澄は何事も無かったかのように、普通に缶コーヒーを開けて口を付けた。
そんな霞澄の横顔を見ると、モヤモヤした感情が胸を覆った。
俺はきっと、この感情の正体を知っている。
悔しさ
俺は…
俺はこんなに緊張したり、焦ったりするのに、霞澄はそんな素振りは全くなくて。
俺よりずっと男らしくて。
なんか、
俺だけこんなに霞澄のことを思ってるなんて、不平等じゃないか…
なんて、ガキな俺は思ってしまう。
これじゃまるで、片思いしてる女じゃないか。
はぁ....
俺は、小さなため息を口からもらした。
ため息は、乾いた空気に浸透していった。