甘い唐辛子
「はい、受理します。おめでとうございます、お幸せに。」
今日から私は
『海堂 霞澄』
になる。
藤成の名前では無くなってしまったことは、やはり悲しく、寂しく、残念に思うけど、ここまできたからにはやり直す気もない。
それに私は、維十の隣で、維十を支えて行くと決意したから悔いも残していない。
「新婚旅行は?」
「行かねぇよ。学校あんだろ?」
「でも、行ったほうが…」
「うるせぇな、親父。」
しつこい父親に、半ギレの維十は2人揃って黒塗りのベンツに乗り込んだ。
私は呆れてそれを見ていると、ヤスさんに呼ばれて、2台目のベンツに乗り込んだ。
「何だか、今日は快晴ですね。」
「あぁ。」
窓越しに見た空は、窓の色で濁ってはいたが、真っ青で雲1つ無いことはわかった。