甘い唐辛子
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「で?どこに行くんだ?」
「まぁ、適当にブラブラしとこうぜ。」
「本当に無計画なんだな。」
「まぁな。」
維十に右手を引かれながら街を歩くと、自然と通行人の視線が集まる。
それは維十に対しての好意の目か、それとも私に対しての好奇の目か…
「髪…」
「え?」
「髪型…せっかく出て来たんだし、変えようかな…」
前髪を触りながら、維十は独り言のように言った。
確かに改めて見ると、維十の髪は全体的に長めだ。
普段はワックスで流しているから、あまりわからなかったが、今日は流していないから余計に長く見える。
「いいんじゃないか?」
「その間、霞澄はどうする?」
「雑誌でも見て、待っとくよ。」
「そんなのダメだ。女を待たせるなんて出来ねぇ。」
「…私は構わないけど…?」
「俺が気にするんだ。
いっその事、霞澄も一緒に切るか?」
私の手を繋いでいない右手で、維十は私の髪を掬った。
腰にかかるかかからないかぐらいまである私の髪は、小学校の時にショートカットにした以来、切ることはなかった。
前髪を切るのと色を変えるのは家でしていたし、今思えば、美容院に行くのは6年ぶりだ。