甘い唐辛子
維十は肩に掛かるか掛からないかぐらいだった髪を、首が見える程度にまで切り、前髪も斜めに切っていて……
初めてだった
男の人のことを
カッコイイと思うのは
「変?」
少し不安そうな維十は、前髪を触りながら首をかしげた。
首を振る私に維十は笑顔になり、
「霞澄も。よく似合ってる。」
サラッと私が嬉しくなる言葉を言った。
久しぶりに変えた髪型に不安だったのは、維十に伝わったのだろうか?
もし維十が私の表情で感じ取ったのならば、
こんなに嬉しいことはない。
私はあまり感情を表に出さないからよく勘違いをされたり、判ってもらえなかったりするから……
「ありがとう。」
出てきた言葉は微かに掠れ、無意識に維十の服の裾を掴んだ右手は微かに震えていた。
こんな些細なこと、
普通の恋人同士ならそんなに珍しくもないことが、
嬉しくて
嬉しさのあまりに震えるなんて、
今までの私には考えられなかった。