甘い唐辛子


維十は肩に掛かるか掛からないかぐらいだった髪を、首が見える程度にまで切り、前髪も斜めに切っていて……

初めてだった


男の人のことを

カッコイイと思うのは



「変?」

少し不安そうな維十は、前髪を触りながら首をかしげた。

首を振る私に維十は笑顔になり、


「霞澄も。よく似合ってる。」


サラッと私が嬉しくなる言葉を言った。



久しぶりに変えた髪型に不安だったのは、維十に伝わったのだろうか?

もし維十が私の表情で感じ取ったのならば、
こんなに嬉しいことはない。



私はあまり感情を表に出さないからよく勘違いをされたり、判ってもらえなかったりするから……




「ありがとう。」


出てきた言葉は微かに掠れ、無意識に維十の服の裾を掴んだ右手は微かに震えていた。



こんな些細なこと、
普通の恋人同士ならそんなに珍しくもないことが、
嬉しくて


嬉しさのあまりに震えるなんて、


今までの私には考えられなかった。



< 163 / 212 >

この作品をシェア

pagetop